本来の「多能化」とはジョブローテーションによる成果物
ジョブローテーションとは
ジョブローテーションとは、人材育成計画に基づき、戦略的に職種を変更する人事異動のことを指します。一つの部門で2~3年の経験を積み、他部門に異動するのが一般的です。これ以外に、部門内で複数の異なる仕事を担当していくケースもジョブローテーション制度の一種です。
例えば、次のようなケースがジョブローテーションになります。
部門間での異動:営業、総務、製造、出荷など複数部門を経験する
部門内での異動:小売店などで、レジ・売り場・倉庫管理といった異なる業務を担当する
業務内での異動:発送伝票の処理・請求伝票の処理、入庫作業・出庫作業など異なる作業の担当をする
さまざまな部門の業務を経験することで事業や業界への理解を深め、社員の能力開発を行うことが目的です。
その成果物による効果は、マンネリ化防止と属人化に対する対応です
同じ作業だけを繰り返しているとマンネリ化してやる気が下がってきますので、それを回避するために他の作業を回すことで飽きないよう仕事の振り方を工夫するのも大事です。
特に特定の人だけがその仕事に付きっぱなしだと、属人化が起きるのが問題になってきます。
属人化してしまうと当人抜きには回らなくなってしまいますので、これをカバーできる体制をとることこそが多能化の本来の目的ではないでしょうか。
当事者の体調不調や入院等で抜けてしまう問題はもちろんのこと、年休の取得をしやすくしていくためにも必要な措置ではあると思います。
会社側は多能化を「マルチタスク化」と勘違いしていないか
如何せん、組合側としては人手不足で人員要求をするのですが、「多能化」で解決しようとします。
※前所属ではコロナウィルスの感染に伴う形で亡くなった方が出たため欠員が生じているのですが、その分の人員補充も行われていないため、人員要求を強めているのですが…
人手不足を多能化で解消しようとするということは、「多能化=一人でより多くの仕事をこなせるようにする」という解釈で、それは多能化ではなく「マルチタスク化」です。
マルチタスク化は一人で複数の作業を同時進行させるため、一見すると効率的で少ない人数で業務をこなせると考えられがちで、有能な人材=マルチタスクができる人とも言われたりします。
しかし、マルチタスクで人手不足を埋めるという発想自体が「労働強化」の発想です。
多能化の狙いはあくまで休暇、病欠といった場合の一時的にカバーリングできる体制をつくることと、マンネリ化対策が多能化の目的であって、恒常的に人手不足な状態で人員を増やさずに解決する裏技ではありません。
なお、以前で働いていた会社ではマルチタスクは禁止でした。
フォークリフトの誘導を担当している従業員がマルチタスクで荷さばきもしていたため、その荷さばき中にフォークリフトにはねられるという事故を起こしたためです。
事故防止のために誘導員がいるのにこれでは本末転倒ではありませんかということになりました。